『Chance! !Vol.27 秋号』ご挨拶に代えて
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5月に保護司が自分の担当の保護観察者に殺されてしまうという、悲しいとしか言いようのない事件が起きました。ネットには「犯罪者に人権なし」とか「もっと厳罰化を」といったコメントと並んで、「保護司制度を廃止すべき」という声が目立ちました。
この事件により、不足している保護司のなり手はますます減るであろうし、更生保護の仕事や活動をしている方々にとっては、そのたびにこれまでの努力が水の泡となるような状況に突き落とされることもあると思います。
出所者や出院者が再犯して痛ましい事件を起こすことは、今後もきっとあります。そのときの社会の感情をコントロールすることはできないし、批判をする人達がいるのも当然のことと思います。
でも、そこで見えてくるものは、官民の関係者や『Chance!!』の掲載企業のように、事件後も変わらず、前科前歴のある人にチャンスをつくりたいと思う人がいるということ。「むしろ、だからこそやる」という人たちがいて、そこに光があるということ。
先日、某刑務所で講座をさせて頂いたときの受講生の方から電話がありました。講師として稚拙で不出来な私に対し、みんなが「何を導こうとしているんだろう」と一生懸命考えて発言してくれて。彼らと、同席してくださった教育専門官の先生のおかげでどうにか授業は成立しました。いや、してなかったかも(笑)。笑いごとではないのですが。
その彼から、お世話になりましたと。あのとき学んだことを思い出して役に立てていきたい、今日2種の免許に受かって、いま交付を待っている時間です、これから運転手の仕事をします、同じ受講生だった●●からもがんばってると連絡がきました…と。希望に溢れた、とても明るい声でした。うれしかったし、私も明るい気持ちになりました。
ショッキングなストーリーはものすごい勢いで世の中に広まって、「最高のネタ」として語られてしまうけれども。もっとみんなが堂々と、こうしたささやかな生き直しのストーリーを語っていい。何よりも自分が聞きたいから、そのためのきっかけをひとつでもつくっていけたらと思います。これからも、よろしくお願いいたします。
2024年8月19日
Chance!! 編集長 三宅 晶子